Opus.7

当店の特徴的なアイテムとして、マントは外せないだろう。7作品目では、待望のマントを更にアグレッシブに仕上げた。和服だけでも目立ってしまう御時世だが、その上にマントを纏えば、もはや衝撃的である。まさに肩で風切るファッションと言えるだろう。人混みを歩けば”モーゼの十戒”の如く、周りが避けてくれる程の迫力がある。はっきり申し上げるが、いちいち人目を気にして生きてる様な器の小さい人間には着こなせない。ただ、一度着てしまうと決して手放せない、そんな男の中の男のファッションアイテムだ。子供の頃に見た映画やアニメでヒーローが纏っていたのがマントである。ヨーロッパでは王侯貴族が礼装としてマントを纏っていたから、フォーマルでも楽しめる。迫力も気品も倍増してくれるのだ。

マイナーチェンジを毎年繰り返して仕上がった現行のマントは、和次元 滴や10年分のデザインの集積であり、滴や自体の年表とも言える。軍用マントまで参考にして探求したシルエット、和服の衿元とマッチし大きな身頃とのバランスを保つように設計し直したやや大きめの衿。両脇にポケットのように見えるのは、手を入れるためでなく、手を出すためのホール。仕立てが手間なので近頃では少ない細工だが、そこは古式ゆかしいマントの良さを継承してある。随所に滴やのこだわりを詰め込んだ自信のカタチなのである。

さて、最初のマントは、紅い地色の上に、まばらに走る銀ラメとカスレ模様の黒ビロードを配置したシャレの技法を散りばめたゴージャスな素材を仕立てた。黒と紅の妖しげなカスレの間を走る銀の光は、緊張感を持って刺さり、全体をまったりとさせない。飛行機から眺める巨大都市の夜景のような印象とでも言うべきか。もちろんマントなので、和服と洋服のどちらにも合わせられるようにデザインしている。このゴージャスさは、どんなパーティでも負けることはないだろう。年の瀬の社交的な季節には、もってこいのマントである。裏地は肌触りが気持ちよい漆黒のキュプラ、ボタンも引き立て役に回り、全体をまとめている。

【風切りマント】

Material	：	表-アクリル 50%、ポリエステル 25%、毛 20%、ナイロン 5%、裏-キュプラ 100%
Size	：	フリーサイズ
Price	：	118,000円＋税

このマントは、1作目のレザー袴【ゴジラレザー】と同素材で仕立てている。マントには、たくさんの幅の広い生地が必要であり、合皮で仕立てる場合は重さにも気を配る。この素材が軽いとは言わないが、シワが刻まれたゴツゴツと力強い見た目より軽く、充分に普段使いの革ジャン感覚で着ることが出来るだろう。

ゴツゴツした表面は、マットな黒なのだが うっすらとした光沢があり、余計にリアルな存在感がある。この表面といい、張りの強さから生まれるシルエットといい、迫力満点である。この素材は、裏側までスウェード調でリアルに仕上げられているが、裏地が付けられているため、ほとんど見えない。しかし、この裏地が玉虫織のワインレッドで 何とも魅惑的な印象をプラスしてくれ、匂い立つ様な男らしさを演出してくれている。

【風切りマント】

Material	：	表-綿 90%、IX 10%、裏-ポリエステル 100%
Size	：	フリーサイズ
Price	：	138,000円＋税

今回の風切りマント、ベニスズメが妖しさ、コウモリが力強さを特徴とするなら、このカワセミはスマートだと言える。上の2作品に比べ大人しい印象があるが、さらりと品良く風を切ってくれることだろう。素材には、軽くかつ保温性に優れる“色フラノ”を使用している。フラノ自体は特に珍しい生地ではないが、このような美しいブルーのフラノに出会うことは、まず無いだろう。日本の色名で言えば、縹色(はなだいろ)である。嫌みのない品の良さは、和服の上に纏うマントになるためだけに織られたと言う方が正しいだろう。そして、この作品【カワセミ】には配色違いがある。鳥のカワセミがブルー1色ではないのと同様に。もう1色はローズグレーで、日本の色名で言うなら茶鼠色(ちゃねずいろ)だろうか。

さらに、この作品のもうひとつの特徴は“裏勝り”だということ。和服の男羽織がそうであるように、こだわりの裏地を付けている。縹色の方には、油絵のような筆遣いの縞模様を精巧にプリントした裏地。茶鼠色の方には葉をモチーフにした幾何柄の紺色の裏地など。それぞれに趣向を凝らした裏地やボタンを用いて、細かいところからチラリと見える部分にまで こだわりながらも、全体としては さらりと仕上げている。

【風切りマント】

Material	：	毛 100%、裏-ビスコース 100% など
Size	：	フリーサイズ
Price	：	98,000円＋税