まず最初にお知らせしたいのは、今回のしたたり小袖からデザインが修正されたことである。したたり小袖の至上命題である現代的なシルエットと機能性の追求に加え、たたみ易さも考慮した結果、マイナーチェンジとなった。より理想のフォルムへと近づくことが出来たと自負している。
また、先日発表した【士揃ヱ/SAMURAI ZOROYE】は、初心者や外国人にも着やすい様に工夫したシンプルな3点セットであり、この新ラインが誕生したことで、【したたり】ラインの方は今後、更に厳選した素材で、滴やの独自性を今まで以上に高めていく。
さて、今回の10周年企画の5作目は秋の夜長に向け、滴や的夜会コーディネートの特集である。
最初のしたたり小袖は、迷宮に迷い込みそうな妖しさ渦巻く線描柄である。極細ラインやカスレまで表現されたプリントは、とても細密な技術力が込められている。間違いなく日本製のプリントマシンによる技であろう。今の日本人なら写真や絵画のプリントをして精巧さを誇るところであろうが、細密な線描柄をプリントするあたり、イタリア人のセンスは違う。このさりげなさこそ洒落だ!贅沢だ!と格の違いを見せつけられるテキスタイルではないか。そしてこの細密さは和服のフォルムによくマッチして、想像以上の出来映えとなっている。生地の素材は最上質な綿で、しっとりとしてエレガントな風合いながら独特な表情を持つ。
そしてビロードの黒の縞がマットな黒地の上を走り、上質な洒落を醸し出す袴。少し太めのビロードのストライプが、袴のヒダと相まって魅力的な黒の世界に誘ってくれる。ビロードの縞は、繊維の毛羽を電気植毛したフロック加工である。生地の関係で各サイズ1枚ずつしか仕立てられなかったので、希少な袴である。
Material | : | 表-綿 100%、袖裏-キュプラ 100% |
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Size | : | Mサイズ、Lサイズ、2Lサイズ |
Price | : | 42,000円+税 |
Material | : | ポリエステル 100% |
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Size | : | Mサイズ、Lサイズ、2Lサイズ |
Price | : | 50,000円+税 |
ご覧の通り、この企画が無ければ絶対作れないであろう小袖である。真っ白な総フリンジは、無数の糸を毛羽立たせた独創的な存在感があり、ゴージャスそのもの。糸を飛び出させた織りはしっかりと密であるが、上質なポリエステルゆえのしなやかさで、見た目の柔らかさを損なわない風合いだ。こういう洒落は現代でしか味わえまい。文明の利器に感謝である。しかし、仕立てに関しては素材的に困難が多く、職人泣かせの一面も持つ逸品である。この小袖自体は一見、美しい獲物のような印象だが、着こなせるのは間違いなく狩人の側の人間だろう。
パッチワーク調アーガイル柄の袴も、いかにも女子ウケしそうである。比較的大きめの柄ゆきだが、配色はモノトーンであるため目立ち過ぎず、柄とヒダとの兼ね合いが個性的。顔料によるプリントが、スウェードのような風合いを引き出していて、穿き慣れて使用感が出ることで楽しみも増してくる。かわいい表情を見せながらも、ハードな袴に育つあたりが、何とも心憎い。
Material | : | 表-ポリエステル 100%、袖裏-キュプラ 100% |
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Size | : | Mサイズ、Lサイズ、2Lサイズ |
Price | : | 80,000円+税 |
Material | : | ポリエステル 100% |
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Size | : | Mサイズ、Lサイズ、2Lサイズ |
Price | : | 45,000円+税 |
小袖・袴ともに生地の切り替えが特徴的なコーディネート。オレンジとブラウンの対比が情熱的な印象を与えるのは、切り替えの構図の大胆さにもよるのだ。効果的であっても、袴のヒダ裏の切り替えなどは、他の袴と比べてダントツで手間の掛かる作業である。職人泣かせであることも、またダントツの袴なのだ。更にひねくれたことに、このコーディネートの一番の美しさは、後ろ姿にある。肩の切り替え、腰の位置にあたる袴の紐の切り替え、袴のヒダ奥の切り替えとリズム感のある連続が心地良いのだ。そして、この上下はバラバラで使っても、存分に個性を発揮してくれるので重宝である。小袖の肩山~袖山の生地は、袴と同素材で朱色のヘリンボンにコゲ茶の顔料を乗せている。身頃部分のオレンジの生地は、四角い紋様を浮き出させた表情豊かなフクレ織である。
袴は、紐を朱色に変えているだけで独創的な上に、歩くことで切り替えのヒダ裏の朱色をチラ見せするカラクリ物で、周囲の視線を引きつける逸品である。上下ともに手間が掛かり過ぎ、制作効率が良くないので、希少な作品であることは間違いない。
Material | : | ポリエステル 76%、綿 24% (肩山部分-ナイロン 77%、ポリエステル23%) |
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Size | : | Mサイズ、Lサイズ |
Price | : | 50,000円+税 |
Material | : | ナイロン 77%、ポリエステル23% |
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Size | : | Mサイズ、2Lサイズ |
Price | : | 58,000円+税 |
このコーディネートでの一番の特徴は、イタリアの織元メーカー〈CANONICO カノニコ〉の高級生地で仕立てた袴だろう。〈CANONICO カノニコ〉は、糸の紡績から機織・染色まで自社で一貫して行うイタリアの3大テキスタイルメーカーだ。ウール細番手・スーパー120'Sクラスの良質糸で主にメンズ生地を織っている。その〈CANONICO カノニコ〉で、しかも珍しいリバーシブルの生地を、この企画のために大人買いしてしまった。ブルーのギンガムチェック×グレー無地のリバーシブルで抜群に肌触りも良い。この上等な素材をヒダ裏のみ切り替えの袴に仕立てた。素材の上品さを消さぬよう、紐はそのままに。触感が絡んでくるので文字で表すのは難いが、さすがに素材が良いのでシルエットもキレイに仕上がった。控えめな上質さは組合わせの幅を広げ、しなやかで暖かい。何より品が良い! 派手さや渋さ、男らしさや可愛さに比べ、品の良さを追求するのは難しい。どれだけ派手で男らしくても、品が無ければ台無しなのだ。そういう意味で、この大人しめの袴を作品から外すことは出来ないのである。
コーディネートに大胆さを補完する小袖の方も、ただの脇役ではない。【スペクター】コーディネートの袴と同素材だが、配色はマットな黒地に濃紺のビロードによるボーダー柄だ。色の対比が緩いので、大胆なボーダーの割にまとまりが良く、引き込まれるような妖しさもある。ボーダーはストライプより印象は優しいが、仕立ての面ではビロードによるボーダーを揃えて縫うので、こちらもなかなか職人泣かせな逸品だ。制作点数も少なくて、希少な小袖である。
Material | : | 表-ポリエステル 100%、袖裏-キュプラ 100% |
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Size | : | Sサイズ、Mサイズ |
Price | : | 46,000円+税 |
Material | : | 毛 100% |
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Size | : | Mサイズ、2Lサイズ |
Price | : | 69,000円+税 |