暑い季節にマントとは…狂気の沙汰と思われそうだが、いたって正気である。10周年企画なので、需要などどうでも良い。心意気である。
そもそも心意気も無く、夏に和服を着る訳が無いじゃないか。着る人は暑さを我慢して、見る人にそよ風を想像させる。まさに滅私奉公の心意気だ。男たちには夏こそ頑張ってもらいたい。
さて、1作品目のタイトルは「蚕」だ。といっても絹ではない。コットン×レーヨンの編んだ様に織られた透け感で風になびくマントは昆虫の羽を思わせた。上品な光沢を備えた白い羽は、繭から羽化した蚕のイメージだ。何となく貴公子と呼びたくなる様な雰囲気も滲む。(本物の蚕はカワイイと女性からも評判らしい)
素材を透けるモノに変えただけで、冬のマントとまったく同じく丁寧な仕立てだ。手は抜いていない。ある意味で究極に贅沢な遊びと言えるのではないだろうか。
Material | : | 綿60%、レーヨン40% |
---|---|---|
Size | : | フリー |
Price | : | 63,000円+税 |
マントと言えば黒っぽい色が人気だが、暑い季節に濃い色はきびしい。しかし透けるほどに薄い生地の黒は美しい。例えるなら蜉蝣の羽だ。儚さを漂わせる美しさ、妖しさ、そして涼しさ。そのすべての要素を含んでいる。
薄羽を思わせる生地の上を斜めに起毛したラインが走る。それが広い面積での単調さを打ち消し、独特の豪華さを生み出してくれるのだ。前合わせや衿の立ち具合、ポケットの切れ込みの美しさに、仕立ての丁寧さが結実している。すべては、まとった時のシルエットの美しさのために。
Material | : | レーヨン75%、麻25% |
---|---|---|
Size | : | フリー |
Price | : | 70,000円+税 |
3点の中では、一番男らしい雰囲気を持つマントだ。黒の中に1本だけ白い繊維を入れた糸で織り上げられた網の様な素材。それが全体では、すれた墨黒の色になって迫力が増している。ざらっと見える質感が、更にそれを引き立たせている。
透け感も一番で、見た目の涼しさも際立っているから、下に着た和服の色柄で様々な変化を見せることだろう。マントの下で和服が泳ぐ様子を想像して、蚊帳の中に放した蛍に見立てた。日本らしく、美しいマントに仕上がったと自負している。もちろん、マントの下に洋服を着ることもお勧めしておきたい。
しなやかな素材だが、衿のラインも肩からのシルエットも美しく仕上がっている。こういう小さな穴がある透ける素材は、冬物よりデリケートなので、かえって仕立ては難しいことも追記しておきたい。つくづく贅沢な洒落だとご理解いただけることだろう。
ちなみに、マントの下の赤いグレンチェックの小袖と 黒いタータンチェックの袴は、ともに麻100%だ。
Material | : | ポリエステル 100% |
---|---|---|
Size | : | フリー |
Price | : | 63,000円+税 |