十五周年に寄せて
去る3月26日、 【 和次元・滴や 】 は、15周年を迎えました。有り難うございます。 2005年、袴の専門店として、 【 和次元・滴や 】 は 京都に誕生しました。 店主の宗裕が、構想を温めてきた 《HAKAMA-SHIKI/袴式和服》 の開発、設計、発表の場として、週末と祝日のみ営業する店です。
開店から、3,4年経過した頃、越前屋 俵太さんが来店しました。しばらくして (たしか雪の晩のことだと記憶していますが) 俵太さんが、鍋をするから… と、ご自宅での夕食に招待してくれました。 その時「店主なのは分かるけど、お前の本当の肩書きは何なんだ? デザイナーっていう響きじゃ軽いよな。」と俵太さんに聞かれました。 店主は考え、数日後に再訪して、 【 よそおいのみやつこ 】 漢字表記は 【 装造師 】 にしました… と答えました。 もちろん、店主の作った造語です。 古代日本の氏姓制度である、造(みやつこ)からの発想です。 「装いを造る」 という漢字の意気込みはともかく、 【 よそおいのみやつこ 】 という訓読みの方に、店主の本意を込めています。 「みやつこ」 とは 「み」 と 「やつこ」 から成ります。 「み」 という敬称こそ付きますが、 「やつこ」 は 「奴」 、 奴隷です。 この仕事に取り憑かれ、この仕事の奴隷となりつつあった店主には相応しい肩書きなのではないかと考えたのです。 (長いひらがなの肩書きでは締まらないので、漢字表記を後付けしました。) 僕の答えに、俵太さんも「ええやんか!」と笑ってくれたのを思い出します。
開店当初から 15周年を過ぎた今日まで、仕事に対する気持ちの変化は、微塵もありません。 幸いなことに、今では少数ながらも優秀な職人さんや仲間たちに恵まれました。 2015年からは、サイトでのコレクションの発表も始まり、楽しみにしていただいている方々も 少しずつ増えてまいりました。 こうして仕事に取り憑かれながら、15年もの時間を過ごすことが出来ましたのも、偏に長らく応援してくれる方々がいてくれたからだと、深く感謝している次第です。
2020年 5月吉日
和次元 滴や 装造師 宗裕